囲炉裏端で使っていそうな昔風のデザインからダッチオーブンのような見た目のものまで、いくつか種類のある南部鉄器の煮込み鍋。検索してみるとそれほど数は多くありませんが、サイズやふたの材質の違いなどで意外と迷ってしまいがち。
僕が南部鉄器のシチューパンと出会ったのは、旅先である盛岡の百貨店、カワトクでのこと。ちょうど煮物用の鍋を探していたところで、後の愛用品となるシチューパンを見つけました。
なので僕自身は煮込み鍋を選んだ経験はありませんが、岩鋳のファミリーシチューパンを手にして良かったと思い続けてきた経験から、選ぶときのヒントになりそうなことを書いてみたいと思います。
南部鉄器煮込み鍋の選び方
使い勝手のいい大きさは?
すき焼き鍋やグリルパンについては「大は小を兼ねる」と考えていますが、煮込み鍋となるとその用途から、大きすぎても小さすぎても使い勝手が悪くなると思います。
というのも、煮物や煮込み料理は煮汁に浸かっていてなんぼの調理法。鍋が大きすぎるとその分煮汁が多く必要となり、逆に小さすぎると少量しか作ることができません。
ですから、自分のいつも作る量に見合ったサイズの鍋だということが一番の前提条件。大小の鍋をいくつもそろえられる環境ならいいかもしれませんが、ひとつ選ぶとするならば自分にしっくりくるサイズを選ぶことが大切です。
鍋の深さは?
これについても、検索すると深いものと浅いものの両方が出てきます。ですが僕は断然深型がおすすめ。煮込み鍋については大は小を兼ねませんが、深は浅を兼ねると思います。
というより、買った後で深さが足りなかったと後悔するほうが心配。浅いと作れる料理の量も限られますし、揚げ物やグラタンなどほかの用途に使ったときにも不便な点が出てきてしまいます。
逆に深いことで生じるデメリットは、あまり思いつかないかも。強いて言うならば、重たくなる、収納場所に高さが必要、食卓で取り分けるときに少しだけ不便、といった程度でしょうか。
ですが敢えてすき焼き鍋ではなく煮込み鍋を探しているような状況なら、深さのある鍋を選んでおいて間違いはないでしょう。あくまでも僕の主観ですが、浅くて困ることはあっても、深くて困ることはないと思います。
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ふたの材質も重要
僕が岩鋳のファミリーシチューパンを使い続けて、一番感じるのがふたの役目の重要さ。作る料理によってふたを使ったり使わなかったりしますが、絶対に鋳鉄製の重たいふたを使いたくなる場面が。
その場面というのが、無水調理。例えばラタトゥイユや白菜のクリーム煮などは、野菜のもつ水分だけで作れてしまいます。水を使わない分、素材の旨味も濃く感じられる。こんなことができるのは、蒸気を閉じ込めつつ吹きこぼれにくい構造の重たいふただからこそ。
僕の愛用している岩鋳のファミリーシチューパンのふたには、写真のとおり小さな突起が作られています。これがあるから、吹きこぼれを防いでくれる。ふたをずらすことなく全閉していても、余分な蒸気のみを外へと逃がしてくれます。
一方で、木製のふたが付属している製品も見かけます。重量としては木の方が扱いやすいでしょうが、煮汁が染みこんだりカビが生えたりと、経年によって取り替える必要も出てきそう。ですから、絶対に木のふたが良いという理由がなければ、南部鉄器製のふたが付属している鍋を選ぶことをお勧めします。
南部鉄器ならではの利点も
同じ鉄鋳物の煮込み鍋でも、外国製の無骨なダッチオーブンやホーロー引きのカラフルなものもたくさん売られています。特にダッチオーブンなどはむき出しの鋳鉄を使っているという点で、南部鉄器とは大差ないように思えるかもしれません。
ではなぜ僕が、これほどまでに南部鉄器をお勧めするのか。それは、シーズニングという面倒な油ならしが不要だから。もともと鉄瓶から生活道具へと進化を遂げた南部鉄器。鍋肌には伝統の技で被膜が形成され、シーズニングなしでも錆びにくいように作られているのです。
それではなぜ、シーズニング不要だと便利なのか。それは使い始めの面倒な作業が不要という点もありますが、使用後の面倒な手入れも必要ないという部分が一番大きいかも。
使い終ったら洗って空焚きするだけ。油を塗らずに保管できるので、キッチンが汚れる心配もありません。使用後にひと手間があるかないかだけでも、日々コンロに登場する頻度が変わってきてしまうはず。南部鉄器は伝統工芸品であると同時に、昔から生活に寄り添ってきた日用品なのです。
パッと見、それほど種類の多くないように思える南部鉄器の煮込み鍋。ですがここに書いてきた通り、意外と選択肢は少なくはありません。きちんと使えば一生モノの、南部鉄器の煮込み鍋。せっかく手にするなら、愛着をもって日々使える鍋を選びたいですね。
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