水分や塩分に弱いイメージが持たれがちな鉄製品。鉄鍋で煮込み料理をすると錆びてしまいそう。そう思ってしまうかもしれませんが、実は全然大丈夫。
意外とタフで、意外と気難しくない。それなのにいつもの料理を格段においしくしてくれる、南部鉄器の煮込み鍋。日本の誇る伝統工芸の技で造られたこの鍋の魅力を、6年間使い続けてきた僕がお伝えしたいと思います。
南部鉄器煮込み鍋を6年使ってみて
煮物が抜群の仕上がりに
煮込み鍋、シチューパンの名の通り、一番力を発揮するのが煮物や煮込み料理。煮えにくくかつ煮崩れやすいじゃがいもは、形を保ったまま芯までホクホクに。硬いにんじんも短い時間で甘く煮え、煮溶けてしまいがちな玉ねぎはとろ~り甘く、でも形が残ったまま。根菜類の味の違いが、まず初めに一番驚いたポイントでした。
野菜だけではなく、お肉もおいしくしてくれるのが嬉しいところ。スペアリブや骨付き鶏をじっくり煮れば、ほろりとろりとした仕上がりに。もちろん角煮などもお手のもの。圧力鍋よりは少々時間はかかりますが、自然な柔らかさの煮えあがりは、一度体験するとやめられません。
重たいふたがあってこそ
根菜やお肉を塩梅よく煮たり、無水調理で素材の旨味を引き出したり。南部鉄器の鍋の力を最大限に引き出すには、密閉できる重たいふたが付いた製品だからこそ。
煮込み鍋の中には木のふたのものがありますが、僕は断然鋳物鉄のふた付きの製品がおすすめ。蒸気を逃がさず内部の圧を高めてくれるので、比較的短時間でおいしい煮込み料理ができるのです。
この鍋のおかげで揚げ物解禁!
これまで、好物ではあるものの敬遠してきた揚げ物。油が跳ねてコンロを汚すし、使った後の鍋を洗うのも一苦労。その労力とできあがりのバランスを考えると、どうしても揚げ物は外食で、となってしまっていました。
ですがこの鍋を買ってから、十数年ぶりに揚げ物を解禁。深さがあるので油跳ねが少なく、そしてなぜか跳ねた油も水拭きですっきり掃除できてしまう。この点はフライパンやすき焼き鍋の記事でも触れましたが、本当に不思議のひとこと。飛んだ油の質が、フッ素加工のものとは違うのです。
また、使用後の鍋を洗うのがラクなのも大きなポイント。洗剤いらず、水と亀の子束子で洗うだけなので、僕にとっては全く負担に感じません。煮物で荒れた鍋肌も黒さを取り戻し、自分にとっても鍋にとっても一石二鳥。煮込みだけでなく揚げ物にも活用してもらいたい、そんな万能なお鍋なのです。
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冷ましながらの味染みはできない
おでんや煮物などは、冷めるときに味が染みる。まさにこの通りなのですが、むき出しの鉄でできている南部鉄器の煮込み鍋ではできない芸当。冷める過程で放置すれば、どうしても錆びてしまいます。
また、カレーやシチューを作り置きして後で食べる、なんてこともできません。ですから温かいうちに食べきるか、残った分は別の鍋に移すなどの工夫が必要。この点だけは、鉄鍋ならではの不便さかもしれません。
煮る、炊く、揚げる、オーブンへの大活躍!
煮込み鍋、シチューパンという名前を聞くと、どうしても用途が限られると思うかもしれません。ですが前述のとおり、揚げ物にも最適な材質と形状。南部鉄器は揚げ物鍋の材質として、古くから支持され続けています。
さらには炊飯鍋としても使用可能。密閉する重たいふたがあれば、おいしいご飯が簡単に炊けます。土鍋のふっくらもちもちとは一味違うシャキッと芯の通った炊きあがりは、いつものお米の新しいおいしさを教えてくれるかもしれません。
また、オーブンへそのまま入れられるのも便利なところ。グラタンなどは具材炒めからソース作り、そして焼いて食卓へと、この鍋ひとつで完結します。ハンバーグやローストチキンなども、焼き目を付けてからオーブンへ。とにかくいろいろなシーンで使いたくなるような便利さがあります。
そのまま器として食卓へ
鍋のまま料理を食卓に出せるのも、南部鉄器の持つ雰囲気があるからこそ。無骨でありながら、無機質ではない。囲炉裏端や暖炉など洋の東西を問わず古くから暮らしに溶け込んできた鉄鋳物には、なんとなくほっとさせるような温かみが宿っています。
また、カセットコンロや卓上IHなどを用意すれば、冷めかけた料理を鍋のまま温めなおせるのも嬉しいところ。特に寒い冬には、そのありがたみをしみじみと感じます。
煮る、焼く、揚げる、炊く・・・。日常の万能な調理鍋として、そしてそのまま器として食卓へ。一見錆びやすく扱いの難しそうな南部鉄器の鍋ですが、一度使ってみればその使い勝手のよさに驚くことでしょう。
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