お手頃なものから高価なものまで、価格に幅のある南部鉄瓶。さらに容量やデザインなどを見比べてみると、選択肢がありすぎていろいろと迷ってしまいがち。
普通に使っていれば、一生モノともいわれる鉄瓶。せっかくなら、気に入ったものを手に入れ長く大事に使いたいもの。長く使うためには、自分の使い方や見た目の好みにピッタリ合っていなければ、後々不満が出てきてしまいます。
使いたいと思わせる相性の良さがあるから、長く使っていける。長く使えば愛着が湧き、さらに使いたいと思わせてくれる。そんな自分にとってベストなパートナーを見つけるためのちょっとした視点を、7年間飽きもせず鉄瓶でお湯を沸かし続けてきた僕がお伝えしたいと思います。
南部鉄器鉄瓶の選び方
まずは容量決めから!
囲炉裏やストーブの上に置きっぱなしという使い方をするなら、空焚きを防ぐためにも大きな鉄瓶を買ったほうがいいかもしれません。ですが、そのような使い方ができる家って、今はあまりない気もします。
そこで大切なポイントになってくるのが、鉄瓶の容量。大きなもののメリットとしては、一度に多くのお湯を沸かせるという点。一日のうちに何度もこまめに沸かす手間がないので、その点は便利かと思います。
その反面、その大きさからくる重たさが難点。重たい鉄鋳物でできているので、自重自体も結構なもの。さらにそこへたっぷりの水が入れば、ポットへ移し替えるのもひと苦労、なんてことも。
いっぽうで、小さいもののメリットとしては軽めで場所をとらないということ。水を入れてもそれほど重たくなく、小さいので部屋に出しっぱなしにしていてもそれほど主張しすぎることはありません。
ですが一度に沸かせる量が少ないので、沸かしてポットへ移すという作業を何度か繰り返す場合も。僕はこの使い方を面倒だと感じたことはありませんが、人によってはまどろっこしく感じるかもしれません。
もうこればかりは、自分の使い方や好みと相談するしかありません。一度にまとめてお湯を沸かしたければ大きいものを、その都度沸かしたり置き場所を気にしたくない場合は小さいものを選ぶといいかと思います。
ちなみにここでひとつ大切なポイントが。鉄瓶には容量●ℓと設定されていますが、勢いよく沸騰し吹きこぼれるため容量最大のお湯を沸かすことはできません。特に小さい鉄瓶を買う際は、その点を十分考慮する必要があります。
予算はどれくらい?
すき焼き鍋やグリルパンと違い、比較的お値段の張る南部鉄器の鉄瓶。錆を防ぐために施された特殊な加工や、繊細な紋様のことを考えれば納得の価格です。
それでもやはり、お湯を沸かすという用途のためだけに買うには結構勇気がいるもの。初めての場合は自分がこの先使いこなせるか保証もないので、さらにハードルは上がってしまいます。
そこでしっかりと決めておきたいのが、希望の価格帯。南部鉄瓶は文字通りピンキリ、サイズやメーカー、材質によりお値段には相当幅があります。ネットで買える範囲でも、一万円を切るものから百万円を超えるものまで。お湯を沸かすという用途は同じですから、ある意味もうこれは趣味嗜好の範疇になるかもしれません。
高いものは有名な職人さんが作っていたり、普通の鉄ではなく砂鉄からできていたり。砂鉄のものは鈍い銀色に光り、沸くときに鳴る音も違うのだそう。僕も合羽橋の店頭で砂鉄製の南部鉄瓶を見ましたが、独特の輝きはとても美しいものでした。
上を見たらきりがない。ではお手ごろなものは質が劣るのか?といえば、決してそんなことはありません。僕の愛用している鉄瓶は、いわゆる大量生産品とよばれる比較的安価なもの。それでも内部はきっちりと金気止めの加工が施され、7年経った今でも錆びることなく毎日働いてくれています。
この安心感こそが、南部鉄器のもつ最大の魅力。そもそも多数のメーカーが価格競争しているわけではないので、比較的安価といっても品質に間違いはありません。それぞれのメーカーが、自信をもって造っている製品なのです。
あとはもう、人それぞれの価値観に任せるだけ。一生モノだからと高価なものを手に入れそこに価値を見出すか、手ごろなものを肩肘張らず気楽に日常使いするか。自分にとってしっくりくるものを見つけたいものですね。
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好みのデザインを見つける
南部鉄瓶のデザインは様々。まず注目したいのが全体のフォルム。いわゆる鉄瓶らしいずんぐりむっくりしたものから、平たいものや角ばったものまで多種多様な形をしています。この形ひとつとっても、与える印象が大きく変わります。
続いては紋様。伝統的なアラレや花鳥風月にちなんだものから、幾何学模様や潔さを感じさせる無紋様のハダまで、施される装飾は千差万別。フォルムと紋様の組み合わせにより、伝統を感じさせるものやモダンなものと印象が変わってきます。
さらには色合いという選択肢も。先ほど書いたように砂鉄製のものは銀色をしていますが、普通の鋳鉄の鉄瓶は独特の黒色が特徴。ですが、その鉄自体の色合いもメーカーや製品により差があり、さらに錆色をしたものからカラフルに着色されたものも。
ここまで挙げたとおり、形×装飾×色の組み合わせは無限大。一度買うとそうそう買い替えることのない一生モノの鉄瓶、せっかくなら妥協せず自分の好みにしっくりくるものを納得するまで選びたいですね。
意外とつるにも違いが
どうしても鉄瓶の本体に目が行きがちですが、持ち手であるつるの部分にも意外と製品ごとの差が。高級品である中空の袋弦は別として、一般的な製品でも鋳鉄むき出しのものもあれば、比較的熱くなりにくい樹脂加工のものも。
さらに注目したいのが、つるが倒れるかどうか。やかんや土瓶で慣れていると、持ち手が倒れるのはある意味当たり前。ですが、南部鉄瓶はつるが倒れるものは少数派だそう。
このつるが倒れるというのが、意外と便利。収納場所をとらないという利点もありますが、僕が一番気に入っているのが水の注ぎやすさ。つるを倒してしまえば、邪魔するものなく蛇口から水を注げます。
鉄瓶と急須の違いには要注意!
鉄瓶を調べてみると、一見鉄瓶のような見た目をしているのに直火不可、急須です、と書かれたものをよく目にします。これは内部がホーロー加工されており、お湯を沸かすことのできない製品です。
長時間水分を入れっぱなしにすると、錆びてしまう鉄瓶。その難点を補うべく、急須専用の製品ではホーロー引きされています。でもあくまで、お茶を淹れるためのもの。間違っても、火にかけてはいけません。
小さな鉄瓶を探す際は、急須が混ざっているということをお忘れなく。安くない買いものなので、間違って買ってしまったときのダメージを防ぐためにも必ずチェックしてください。
これまでも書いてきたとおり、実用性の中にも機能美を詰め込んだ鉄瓶は多種多様。あれこれ比較しはじめると、どれを買っていいものかと頭を悩ませてしまうこともあるかもしれません。
そこで大事なのが、外せないポイントを決めること。沸かしたい容量と予算感を決めてしまえば、あとはピンとくるデザインのものを探すだけ。
種類が少なければある程度の妥協も必要かもしれませんが、幸いなことに南部鉄瓶は妥協せず選べるほど豊富なラインナップ。だからこそ、しっかりじっくり選んでいただきたい。
一度買ったら、一生モノ。それだけの耐久性のある南部鉄瓶、慌てて買って買い替えるなんてもったいない。自分と相性ピッタリのひとつを見つけ出し、大事に長く使ってくださいね!
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