素人には維持が難しいというイメージを持たれがちな、鉄の中華鍋。購入直後やしばらく経ってからの感想は見かけますが、長年使い続けての使用感についての情報というのはあまり見かけません。
そこで、鉄の中華鍋を20年間使い続けてきた僕が、使うほどに強く実感するその魅力や、使い続けてこられた理由、気付いた点について書いていきたいと思います。
鉄中華鍋を20年使ってみて
万能、大活躍!
強火で豪快に鍋をふる、中華料理の調理シーン。そんな映像をテレビ等でもよく目にしますが、他にもいろいろな調理法に使えるのが中華鍋の一番の魅力。あの形、あの大きさだからこそ、様々な用途に対応できるのです。
まずは一番基本的な使い方である、炒め物。この記事でも触れましたが、とにかく炒め物が美味しくなってくれるのです。丸底なので鍋をあおらなくても具材をかき混ぜるだけで同じような効果が得られ、もちろん振りたければ豪快に鍋を振ることもできます。
お次は焼くという調理法。鉄の中華鍋はフライパンに比べて薄い鉄でできているので、火加減に対するレスポンスがはやい。ですから「焼く」という調理法には少々火加減のコツが必要ですが、慣れてしまえば焦げ付かせずにきちんと焼き物もできてしまいます。
続いては、煮る、茹でるという使い方。丸底のため、少ない分量でもしっかりと水深を保て、軽い煮込みや葉物などを茹でるのにも最適。これは簡単お手入れの記事にも書きましたが、毎回汚れや油をしっかりと落とし、油を塗らずに保管しているからこそ簡単にできる使い方。そして煮る、茹でるを繰り返し鍋肌が荒れたら、ちょっとだけ油を垂らして塗ってあげればいいのです。
また、上の煮る、茹でるに近い使い方ですが、蒸し物にも意外と便利。丸底でしっかりと深さがあるので、よく売っている広げるタイプの蒸し器を使えば、せいろなどを使わなくても蓋をするだけで蒸し物ができちゃいます。
そして最後は、揚げ物。これまた少ない油で深さを出せるので使用量を抑えられ、使い終わった後の油の処理もラク。鍋自体の深さもあるので油飛びも少なく、コンロ周りの後片付けも比較的簡単です。
ただひとつだけ、本当に本当に注意してもらいたい点が。他の平底の鍋に比べ、中華鍋は不安定。ですから鍋がひっくり返らないように、十分すぎるほどに注意してください。
火を使う調理法の大部分をカバーしてしまう、鉄の中華鍋。もちろん道具ごとに特性が違うので、鉄の中華鍋よりももっと向いた鍋というものが、それぞれの調理法に合わせて作られています。ですがなかなか狭い、日本の住宅事情。特にひとり暮らしの部屋などは、キッチン収納など激せま。いくつもの鍋をしまうことも難しいので、どれか一つをと考えた場合、やっぱり鉄の中華鍋が一番万能。これさえあれば、ひと通りの料理ができちゃいます。
お湯がはやく沸く
え、なにこれ?と言われてしまいそうですが、中華鍋はものすごくはやくお湯が沸くのです。薄い鉄厚、丸い鍋肌。これらがコンロの直火をうまく受け止め、びっくりするくらい短時間に沸騰します。
では、これの何がいいのかって?煮物、茹でもの、湯通しなど、料理でお湯を使う場面は結構あります。お湯が沸いてくれるまでは、他の作業をしつつ待つしかない。このちょっとした時間の積み重ねの差が、毎日繰り返す調理に対する負担に直結してくると思うのです。
そしてある意味、電気ケトルがわりにもできてしまう。さすがにお茶など繊細なものには使いませんが、カップラーメンやインスタントの味噌汁程度なら全然OK。使いたい分量をすぐに沸かせるので、意外とこんな使い方もしてしまいます。
気を使わなくても全然平気
僕も鉄の中華鍋を手にするまでは、あれはプロの道具だと完全に思い込んでいました。使い方も難しく、使った後の手入れも大変。勝手にそう決めつけていたのですが、長く付き合ってみると思った以上に頑丈で気難しくないもの。
多少の錆やほんのちょっとの焦げなんて、使っていくうちに治ってしまうだろう。そんな風にラクに構えていれば自然と使用頻度は上がり、どんどん自分に馴染んでくれるのです。
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多少の赤みなら大丈夫
僕が若かりし頃に、一番はじめに手にした鉄の鍋。それがこの中華鍋でしたが、最初の頃は鍋肌が赤みを帯びてくるだけで一喜一憂していました。あの頃は僕も繊細だったんだなぁ。なんて冗談はさておき、多少鍋肌に赤みがさしてきてもあわてる必要はありません。
水を使う調理法を繰り返していると、鍋肌が赤みを帯びてくることがあります。もちろんそのまま放置してしまえば結果的には錆びてしまうのでしょうが、こんな時は炒め物や油物をするように気を付けたり、少しだけ油を垂らして空焼きしてみたり。そうするだけですぐに元の黒さを取り戻してくれます。他の鉄鍋にも言えることですが、どうやら赤みを帯びる=錆びではなさそうです。
意外と持ち手は熱くならない
よくテレビ等で、鉄の中華鍋の持ち手にふきんを巻いて使っている光景を目にします。僕も最初はそうしないと熱くて持てないのかな?なんて思っていましたが、どうやら家庭のコンロの火力程度なら大丈夫そう。持ち手部分は中空になっているので、熱くなる前に放熱してくれているようです。
もちろん持ち手の位置や製品の差、使用環境などで熱くなる場合もあるでしょうから、過信するのは厳禁。そのあたりは自分の中華鍋と相談しつつ、最初は様子を見てみてください。
料理の悦びを教えてくれた、一生モノのパートナー
思い返せば、20年前。2口コンロが置ける家に引っ越し、その嬉しさから衝動買いした山田工業所の打ち出し中華鍋。二十そこそこの僕とプロ仕様のこの鍋との出会いは、ある意味運命だったのかもしれません。
気難しくないヤツだから、気軽に使える。多少放置していても、いじけることなく錆びずにいてくれる。プロの道具を持ったという実感が料理を一層楽しくし、その後の僕の人生を変えたといっても過言ではないかもしれない。
きっとこの中華鍋に出会っていなければ、他の鉄鍋にも出会えてなかったはず。それどころか、こんなに料理を好きになることもなく、メインブログである「旅は未知連れ酔わな酒」すら立ち上げていなかったかもしれません。
僕にとって、食べることは人生の一部。だからこそ、ひと任せにしすぎず自分で面倒見ていきたい。若造からアラフォーまで、僕の生活の悲喜こもごもに寄り添ってきてくれた、この中華鍋。錆びない、頑丈だから。そんな理由だけでは済ますことのできない愛着こそが、長く付き合っていける理由なのかもしれません。もうこいつとは、一生のパートナー。そう思える道具がある生活とは、意外といいものなんですね。
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